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2006年11月14日 (火)

カポーティ

Capote 恐るべき追体験。

■あらすじ■

1959年11月15日。
カンザス州ホルカムでクラッター家の家族4人が、惨殺死体で発見される。

翌日、N.Y.で事件のニュース記事を見た作家トルーマン・カポーティ(フィリップ・シーモア・ホフマン)は、これを次の小説の題材にしようと決心。
幼馴染みで彼の良き理解者の女流作家ネル・ハーパー・リー(キャサリン・キーナー)を伴い、すぐさま現地へ向かう。

小さな田舎町は前例のない残酷な事件に動揺していたが、やがて2人の青年ペリー・スミス(クリフトン・コリンズJr.)とリチャード・“ディック”・ヒコックが容疑者として逮捕される。

ペリーの不思議な魅力に創作意欲を刺激され、拘留中のペリーに接近し面会を重ねる中で、次第に彼の信頼を得ていくカポーティだったが・・・。

(2005/アメリカ) ★★★★

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ノンフィクション・ノベルという新たなジャンルを切り拓いたと言われるトルーマン・カポーティの傑作「冷血」。
その完成までの道のりを描き出した伝記ドラマ。

そして、フィリップ・シーモア・ホフマンが今年のアカデミー賞主演男優賞を受賞した作品。

カポーティも「冷血」も知らなかったけど、かなり興味深い作品でした。
今ではノンフィクション・ノベルの小説はざらにあるけど、そのはしりだったと言うだけではなく、トルーマン・カポーティの人となりが興味をそそる。

一応、ゲイだったのは知ってたんですけど、あの当時にアミングアウトしていたのは知りませんでした。
まだまだ、保守的な時代ですよね。
その中にあって、社交界の真ん中で人々の賞賛を浴び、周りに人が集まってくるのは凄いこと。
巧みな話術で人の関心を惹くのがとても上手い人物だったんですね。

カポーティが持ち得た人脈と話術を活かし、ホルカムでの殺人事件の重要な証言を手に入れてゆく。
そんな中、容疑者の2人が捕まり、カポーティはそのうちの一人ペリー・スミスに興味を持つ。

ペリーがネイティブ・アメリカンの血を引き、差別されてきたこと。
母親が育児に熱心ではなく不遇の子供時代を過ごしてきたこと。

カポーティ自身もゲイであることから差別され、母親に捨てられた経験を持つことからペリーに共感を覚え、彼はとても孤独なのだと庇護者のように振舞う。

しかしその一方で、恰好の小説材料を手に入れ舌なめずりしているようでもある。

ペリーに取り入るため、得意の話術でペリーを懐柔させる。
手なずけるためなら嘘をつくのもて平気だ。
そうして、ついにはペリーの日記までも手に入れる。

ネルからペリーを愛しているのかと問われたカポーティはこう答える。
「たとえて言えば、彼と僕は一緒に育ったが、ある日、彼は家の裏口から出て行き、僕は表玄関から出た」

光と影。
カポーティはペリーの中に、自分の姿を見つけてしまったのかもしれない。

そして、小説を書くことは、ペリーの話を自身の中に取り込み吐き出す作業。
繰り返し書いては推敲を重ねることで、ペリーに侵されていく。

そんな弱ったカポーティにペリーの死刑執行延期と言う拷問が鞭を打つ。
ペリーが死なないと小説は仕上がらない。

ペリーの死を望むのに、失いたくない気持ち。
ジレンマを抱え苦しむカポーティを救うには、もはや刑の執行しかない。

けれど、その体験がカポーティをもっと追い詰めてしまうことになる。
その後、カポーティが壊れゆく様も見たかった気がするけど、想像がつく気もします。

あそこまでカポーティが苦しんだ「冷血」を読んでみたくなりました。

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