明日、君がいない
■あらすじ■
見慣れた朝の光景。
それは、いつもと変わらない平凡な一日を過ごすかに見えた6人の高校生たち。
だが、ひとりひとりが誰にも打ち明けられない悩みや問題を抱え、今にも押しつぶされそうになっていることが、次第に明らかになっていく。
そして、午後2時37分。
悲劇は起きる・・・。
(2006/オーストラリア) ★★★★☆
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19歳で脚本を書き上げ、21歳で本作を完成させたムラーリ・K・タルリ監督。
初監督作品とは思えないほどの出来映えに驚きました。
高校が舞台になっていることや、最後に訪れる悲劇。
効果的に使われるクラシック曲や、登場人物を追いかけ微妙にクロスする時間軸など、随所にガス・ヴァン・サント監督作「エレファント」との共通点を感じました。
大きく違うのは、「明日、君がいない」には登場人物のインタビューが挟み込まれていることでしょうか。
オープニングは、“2時37分”のその時から始まります。
気配の消えた部屋。
ドアの下から流れ出てくる鮮血。
誰かが血を流している・・・。
でも、誰が?
こうして、映画はその日の朝からの出来事を6人の登場人物を中心に描いてゆく。
成績優秀なマーカス(フランク・スウィート)と、その妹メロディ(テレサ・パルマー)。
鍛えた身体が自慢のルーク(サム・ハリス)と、ルークに夢中な恋人のサラ(マルニ・スパイレイン)。
イギリスから移住してきたスティーヴン(チャールズ・ベアード)は尿道と足に障害を持ち、
長髪でゲイのショーン(ジョエル・マッケンジー)はゲイであることからイジメを受けている。
それぞれが、時に怒り、時に絶望しながら、
“その日”を必死に生きている。
想像以上に各人の悩みが深くて重くて、心にズシンと来ました。
けれど、“2時37分”のその時、
一人が自らの命を絶とうとすることには、頭も心もついてゆけずに「なんで?なんで?なんで?」と、疑問符ばかりが並んでしまいました。
そうして、誰もが“その子”に対して耳を傾けず、注意を払わずにいたこと。
それは、映画の中のキャストだけでなく、私もその一人だったのだと気付いた時に愕然としてしまったのです。
自分の中で何か問題が起きた時に、他人を気遣う余裕をなくすのは分かる気もするけどね。
人は誰しも“自分だけの世界”を持っているものだと思う。
その中では自分を中心に“世界”が回ることもある。
けれど、そんな狭い“世界”の中に、自分ひとりぽっちだったら…なんて考えると、淋しくなります。
あと、自殺シーンはかなり生々しくて痛いものでした。
死ぬのだって苦しいのだな。。。
何度も何度も、自殺をためらう姿が誰かに助けを求めているようでもあり、痛ましかったです。
過ぎてしまえば、過去のことは何とだって言える。
だからこそ、大事なことは今、伝えないといけないんだな。
そうやって、誰がとつながるっているんだ。
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コメント
双葉さんこんにちは!
この作品は構成や演出やそれぞれの抱えた悩み
は納得できるんだけど自殺したのが彼女というのが
釈然としないんですよね、彼女の場合あの兄に恋心
を持っていて何とか気を引こうとしてただけだったし
兄と妹の関係をしって自殺したのなら納得も行くん
だけど、まだ告白もしてないのに自殺するにはまだ
早いと思うんだけど、もうちょっと説得力がほしか
ったです。
投稿: せつら | 2008年6月 1日 (日) 10時14分
>せつらさん
こんばんは!
コメントのお返事が遅れてしまい申し訳ありません。
>自殺したのが彼女というのが釈然としない
本当にそうでしたよね。
私も「なんで彼女が???」と、思いました。
でも、自殺の原因を提示されたところで、
おそらく彼女の自死を止められなかったような気がします。
友人たちさえも、何故彼女が死を選んだのか解かっていなかったけど、
死を選んだ理由は彼女にしか分からないことですよね。
理由を告げずに死んでしまったけれど、
理由はどこかにあったはず・・・。
理由を告げて死んでいれば、「何故、彼女の死を止められなかったのか」と悔いる映画になるけど、
理由を告げずに死んでしまったので「何故、彼女は死んでしまったのか」と、いつまでも疑問が残る映画になった。
人が死ぬ理由を簡単に片付けていないところが、
逆にリアルに感じられて、怖かったです。
監督さん自身が、突然の友人の死を経験されているそうなので、
意図的に説得力のある自殺としてではなく、彼女の自殺はあくまでも事実として描いたのかもしれないですね。
投稿: 双葉 | 2008年6月 4日 (水) 01時13分