パンズ・ラビリンス
■あらすじ■
1944年、内戦終決後のスペイン。
しかし、内戦終結後も独裁政権の圧政に反発する人々が山間部でゲリラ闘争を繰り広げるていた。
内戦で父を亡くした少女オフェリア(イバナ・バケロ)は、臨月の母カルメン(アリアドナ・ヒル)と共に、ゲリラが潜む山奥へとやって来る。
ゲリラ鎮圧にあたるビダル将軍(セルジ・ロペス)と母が再婚し、自分の元で子供を産ませたい将軍の希望で山奥へと連れて来られたのだ。
長旅で体調を崩した母を労りながらも、冷酷な義父にどうしても馴染めないオフェリア。
そんな彼女の前に妖精が現れ、森の中の迷宮へと導く。
そこに居たのは王女の帰還を待ち望むパン〈牧神〉。
彼は、オフェリアこそが地底に存在する魔法の国のプリンセスの生まれ変わりであると告げる。
そして、満月の夜までに3つの試練を乗り越えれば、魔法の国に帰ることが出来ると。
オフェリアはその言葉を信じて、与えられた3つの試練に立ち向かう決意を固めるが・・・。
(2006/メキシコ・スペイン・アメリカ) ★★★★☆
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現実の苦難を想像力で乗り越えていく。
似たような映画に「ローズ・イン・タイドランド」がありました。
現実が過酷なほどに、少女は想像力を使ってやり過ごす。
そうしなくては生きていけないから。
パパのバッド・トリップも“バケーション”になってしまう「ローズ・イン・タイドランド」では、ジュライザ=ローズちゃんは苦渋の表情を一切見せずに笑い声がはじけ、ふわふわと現実を生きてとアッチとコッチを行き来してました。
現実世界を認識できないが故、想像力が飛躍する。
それに比べると「パンズ・ラビリンス」のオフェリアの苦悩は色濃いです。
作品世界の背景も独裁政権とそれに対抗するゲリラの攻防なので、血なまぐさく陰湿。
一方の魔法世界の描写も、華やかさとは無縁です。
じめじめした地下道に巨大なカエル。
豪華な晩餐会のテーブルが現れても、そこに居るのは不気味(お茶目?)なクリーチャー。
現実の陰湿さがそのままオフェリアの内面に反映されているために、オドロオドロしい異世界を作り上げていたのかもしれません。
それでも、ひたむきに現実を生き、健気に頑張るオフェリアの姿がひたすらいじらしかったです。
魔法の世界を信じて決して揺るがない気持ち。
それが彼女にとって、辛い現実を生き抜くために必要不可欠なものだったのでしょう。
続き物のファンタジー作品が多い中、きっちり物語を完結させて、なおかつビジュアルが独創的だったのが印象的です。
哀切極まるラストには落涙してしまいました。
陽と陰、テイストは真逆ですが、「ローズ・イン・タイドランド」も併せて鑑賞することをオススメします。
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コメント
こんばんは~。
私も「ローズ・イン・タイドランド」を思い出してました。
そうそう、大人が信じなくてオフェリアだけが見ている魔法界もダークだったのが特徴的でしたよね。
久しぶりにすごく後を引く映画に出会ったなって感じがします。
投稿: Kitty | 2007年11月 1日 (木) 23時18分
>Kittyさん
こんばんは!
TB&コメント、ありがとうございます。
ファンタジーなのに、異様な雰囲気が漂ってましたよね。
パン〈牧神)も、可愛い!ってカンジじゃなく、悪役と言われても納得しちゃいそうなビジュアルで・・・(笑)。
アンハッピーエンドだけど、オフェリアにとってはハッピーエンド(と思いたい)っていうラストが、なんとも言えない余韻を残して、私もしばらく映画を引きずってました。
投稿: 双葉 | 2007年11月 2日 (金) 01時56分